木造住宅を劣化する最大要因は?と尋ねますと、シロアリという答えが返ってきます。しかしながら正解は腐朽です。腐朽被害の金額は蟻害の2倍です。蟻害は羽アリが飛び出すので気づきますが、腐朽は点検して初めてわかります。
腐朽、蟻害とも最大の原因は雨漏りです。住宅保証機構(株)2009年の保証件数では、事故の80%は雨漏りで、雨漏りの85%は外壁から15%は屋根からとなっています。木材が腐るには、腐朽菌、酸素、栄養分(木材)と水が必要です。腐朽菌の胞子は空気中に漂っています。木材の含水率が30%近くなると、腐朽が始まります。リフォーム業者によりますと、築15年の木造住宅の壁内部では、ほとんどで木材の腐朽が始まっているそうです。
ニュージーランドでは、19世紀の半ばからラジアータパイン材をDOT処理してフレーム材に使用していましたが、事故が少ないため19世紀末に高温乾燥により食材甲虫の卵を殺す場合は、DOT処理を免除しました。この結果2000年頃、住宅の腐れが社会問題となり、ニュージーランド政府はフレーム材のDOT処理を再び義務化し、問題
は解決しました。写真1のような庇のない住宅が「地中海ルック」の名称でもてはやされたのも一因ですが、食材甲虫の防除のため使用したDOT処理が、木材を腐朽菌から守っていたわけです。写真の住宅は1例ですが、庇がないため雨のたびに壁が濡れること、ベランダと住宅本体の接合部に雨水が侵入しやすいこと、新しい大理石調の外壁材
を使用したことが問題です。
写真1.地中海ルック住宅
⇦ 図.1 布基礎。制定当初は裸地が多く、通風孔の
設置は任意。床下は湿気が充満することがあった。
外壁内に雨水が侵入し湿度が上昇すると、木材が吸湿し腐朽が始まります。カビやシロアリも誘引され、劣化は急速に進みます。建築基準法施行令49条の2では、最低限の要求として、地上1メートル以内の構造耐力上重要な部分である柱、筋交い及び土台に有効な防腐措置を講ずるとともに、必要に応じてシロアリその他の虫による害を防ぐための措置を講ずるよう要求しています。
木造住宅の外壁内構造材は、雨漏りの被害を受けやすく、雨漏りは腐朽や蟻害に直結していることは以上の説明から明らかです。日本の木造住宅は、外壁構造材の保護に関して大きな欠点を抱えています。まずは、外壁構造材が腐朽菌の攻撃に対して如何に脆弱かを以下の写真から理解してください。写真の大部分は、(一社)木造住宅塗装リフォーム協会に提供していただきました。家屋害虫駆除業界は、床下防腐防蟻処理に追われ、外壁内部の木材劣化写真を撮影する機会が少ない。これが今日のリフォーム業界の姿です。
写真3.漏水+腐朽でパネルが繊維化、築17年
写真4:モルタル外壁の構造材腐朽 写真5. 柱が腐朽し一部消失
写真2.漏水による柱の腐れ。築23年
写真6.鉄骨も腐る激しさ。築20年 写真7.ACQ処理住宅への自信
外壁内構造材の劣化写真
・日本の木造住宅は何故短命なのか
・長寿命化リフォーム
本稿内容の問い合わせ先:Eメール institute.boron.tech@gmail.com
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