Ⅲ-短命の理由 

2007年、自民党は200年住宅を提唱しました。日本の木造住宅の平均寿命は30年で、米国55年、英国77年に比較して短すぎる。短寿命住宅の日本では、住宅市場で売買されるのは、ほとんどが新築住宅です。住宅寿命の延伸は、中古住宅市場の活性化にもつながります。
住宅が200年持てば、50年ごとの建て替えに比較して、国民の負担は3分の2に軽減されます。住宅廃棄物も3割に軽減されます。脱炭素社会に大きく貢献します。
技術立国日本で、木造住宅が長持ちしないのはなぜか? 理由ははっきりしています。木材保存
剤として農薬を使うからです。欧米では、農薬(殺虫剤+殺菌剤)は、土壌処理剤としてだけ認められています。では、農薬を木造住宅の保存剤として吹き付けることが,何故短命住宅につながるのでしょうか。
建築基準法施行令四十九条 2 は、「構造耐力上主要な部分である柱、筋交いおよび土台のうち
、地面から1メートル以内の部分には、有効な防腐措置を講ずるとともに、必要に応じてシロアリその他の虫による害を防ぐための措置を講じなければならない」と規定しています。これらの措置は、もちろん木造住宅を使用する期間を通して必要です。
今日、日本の木材住宅の90%以上は、切削加工(プレカット)した木材を建設現場に運んで組立てます。組立てが終わると、地面から1メートル以内の主要構造材に防腐防蟻剤を吹き付けます。
防腐防蟻剤の90%以上が農薬系と推定されます。薬剤を吹き付けた部分が明示されるよう、薬剤にはオレンジ色などの顔料や染料が添加してあります(図1)。


農薬は農作物を病害虫から守る目的で開発されました。
農薬が長期間分解しないと私たちの食物に混入し、いわゆる残留農薬問題が起こります。このため、農薬は早く分解するように設計されます。日本シロアリ対策協会は、木材保存剤としての農薬の保存効果に5年以上の保証を付けないように指導しています。皆さんが、新築住宅に5年ほど居住するとシロアリ業者が訪問し「築5年のシロアリ防除処理に参りました」とあいさつします。業者はすぐ床下に入り、目に見える木材に防腐防蟻剤を吹き付ける。作業はこれでおしまいです(図2)。

皆様にはもうお分かりと思いますが、建築基準法を順守するには、図2に見える木材だけではなく、図1のオレンジ色の木材も防腐防蟻処理する必要があります。このためには、完成した住宅の一階の外壁を5年ごとに全部はがし内部の木材を防腐防蟻することになります。これは経済的
に不可能に近く、技術的にも確立されていません。
第2に、農薬、特に合成殺虫剤はかなり有毒です。人の住んでいる住宅内で散布するわけにいきません。
「日本の木造住宅は何故短命なのか」理由は明らかです。農薬を住宅の防腐防蟻剤として直接木
材に吹き付けるからです。
農薬処理した木造住宅では、築後5年で 壁内部の重要な構造材が腐朽菌やシロアリに対して無防
備になります。食われ放題、腐り放題です。こんな木造住宅だから30年しか持たないのです。
今なすべきことは、住宅関係者が一体となってこの矛盾したシステムを改めていくことです。
 米国では、農薬系の防腐防蟻剤は土壌処理にのみ使用され、木材に直接吹き付けることは禁止されています。木材の保存処理はホウ酸系か銅系(ACQ)が主に使用されています。ニュージーランドでは、1960年頃からラジアータパインの2×4材は、八ホウ酸二ナトリウム(DOT)処理して使用することを義務付けています。
日本でも、I工務店は約30年前から一階の構造材や通し柱をACQ処理しています。今や日本木造住宅業界のトップランナーです。消費者も、100年以上の耐久性のある木造住宅を希望しているのです。

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