木造住宅を劣化する最大要因は?と尋ねますと、シロアリという答えが返ってきます。しかしながら正解は腐朽です。腐朽被害の金額は蟻害の2倍です。蟻害は羽アリが飛び出すので気づきますが、腐朽は点検して初めてわかります。
腐朽、蟻害とも最大の原因は雨漏りです。雨漏りの85%は壁から15%は屋根からです。木材が腐るには、腐朽菌、酸素、栄養分(木材)と水が必要です。腐朽菌の胞子は空気中に漂っています。
木材の含水率が30%近くなると、腐朽が始まります。リフォーム業者によりますと、築15年の木造住宅の壁内部では、ほとんどで木材の腐朽が始まっているそうです。
外壁からの雨漏りは、庇(ひさし)を長くし、こまめに塗装をすることで緩和されます。ニュージーランド(NZ)や欧米では2000年頃、住宅の腐れが社会問題となりました。左の写真のような庇のない住宅が「地中海ルック」の名称でもてはやされたのも一因です。写真の住宅では雨が降るたびに壁が濡れること、ベランダと住宅本体の接合部に雨水が侵入しやすい点が問題です。同様な腐れ問題は、カナダや米国でも起こっています。いったん建設が終わった木造住宅の外壁内部を防腐防蟻処理するのは至難の仕事です。従って、外壁内腐朽の防止措置は、住宅の建設時に済ませ、住宅の寿命を通じて効果を持続する無機薬品を使うのが正しい方法です。外壁内に雨水が侵入し湿度が上昇すると、木材は吸湿し腐朽が始まります。カビやシロアリも誘引され、劣化は急速に進みます。
建築基準法では最低限の要求として、地上1メートル以内の構造耐力上主要な部分である柱、筋交い及び土台に有効な防腐措置を講ずるとともに、必要に応じてシロアリその他の虫による害を防ぐための措置を講ずるよう要求しています。外壁内部の再防腐防蟻処理が困難な以上、処理薬剤に分解しやすい有機殺虫剤や殺菌剤を使用するのは無謀です。
住宅の寿命は、外壁内木材の腐朽が主な原因です。イエシロアリに食害され、突然家が真っ二つになったという話はありますが、通常は、家を建て直すほどの被害は稀です。
シロアリの被害は外壁内被害と連動している場合が多く、羽アリが飛んでシロアリ被害に気づき、ついでに外壁内をチェックしたら予想外のひどさで家の存続を断念した、ということも多いようです。定期的な外壁内部のチェックが必要です。
次ページで、外壁内の腐れを写真で説明します。